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生成AI単体では、企業の意思決定に何が足りないのか?|NDL 2026/6 開催レポート

10月14日
読了時間: 14分

AI時代のデータ戦略:次世代デジタルリーダーが検討した、企業データ×AI活用の次の論点


一般社団法人CDO Club Japan(所在地:東京都、代表理事:加茂 純)は、次世代CDOコミュニティ「Next Digital Leaders(NDL)」の第3回会合を2026年6月に開催しました。
本会では、2026年2月に開催した第2回NDLで議論した、AIエージェント時代における企業変革、AI前提の企業再設計、データ分断、日本企業の勝ち筋といった論点を踏まえ、より実務的なテーマとして「企業データ×AI」に焦点を当てました。
生成AIの活用が多くの企業で広がる一方で、企業の戦略検討や意思決定に活用するには、AIそのものの性能だけでなく、AIが参照するデータの質、鮮度、出典、業務文脈が重要になります。

本会では、参加者が生成AIを単体で活用した場合の有用性と課題を確認したうえで、整備された企業・業界データを活用したAI分析との違いを検討しました。
その結果、AI活用の本質は、単にツールを導入することではなく、AIが参照するデータ環境を整え、出力結果を業務や意思決定に接続するプロセスを設計することにあるという論点が浮き彫りになりました。

本レポートでは、当日の検討内容を踏まえ、AI時代に企業が重視すべきデータ戦略と、次世代デジタルリーダーに求められる役割について議論した内容を要点整理します。

【主な要旨】
  • 生成AIは、情報整理や仮説出しを大きく加速する一方で、最終的な判断・意思決定に用いるには、根拠・鮮度・正確性の確認が不可欠である
  •  AIのアウトプット品質は、AIモデルの性能だけでなく、参照するデータの質、構造化、鮮度、業務文脈に大きく左右される
  • AI活用は、単なる作業効率化ではなく、業務プロセスや意思決定プロセスの再設計とセットで考える必要がある
  • 高度な領域でAIを活用するほど、出力された情報を理解し、評価し、判断する人間側のリテラシーが重要になる 
  • 次世代デジタルリーダーには、自らAIを使う力だけでなく、社内でAIが正しく機能するデータ環境と活用プロセスを設計する力が求められる

【開催概要】
  • イベント名:Next Digital Leaders Roundtable #3
  • 主催:CDO Club Japan
  • 日時:2026年6月
  • 会場:株式会社ユーザベース
  • 参加者:次世代CDO育成研修卒業生、若手CDO、次世代デジタルリーダー 等
  • 協力:株式会社ユーザベース(Speeda):https://jp.ub-speeda.com/


【当日の内容】

1. 代表理事・加茂 純

AI時代に求められるのは、AIとビジネスの両輪で企業を再設計できる人材

 

冒頭、CDO Club Japan 代表理事の加茂 純が挨拶し、2026年6月に開催されたCAIO/ CDO Summit Tokyo 2026 Summerでの議論の論点に触れ、AIの進化によって企業に求められる変革の前提が大きく変わりつつあることを共有しました。
 
また参加者各自の現時点の問題意識に触れ、次世代デジタルリーダーには、AIとビジネスの両輪を理解し、現場の実務課題と経営課題をつなぎながら、AI時代の企業変革を主導する役割が期待されることを強く述べました。



2. 理事・事務総長 水上 晃:第2回NDLからの接続と今回の問題提起

生成AI活用の次の論点は「データ」にある


続いて、同クラブ理事・事務総長の水上 晃より、第2回NDLの議論を振り返りながら、今回のテーマである「企業データ×AI」の位置付けを提示しました。
第2回NDLでは、AIエージェントの本格化、フィジカルAI、日本企業の勝ち筋、データ分断、AI前提の企業再設計といった論点が議論されました。
 
その検討を受け、第3回ではその中でも特にAIを企業の実務や戦略判断に活かすための前提となる「データ」に焦点を当てました。

生成AIは、情報整理、要約、文章作成、アイデア出しにおいて大きな力を発揮します。

しかし、現時点では、ハルシネーションの問題、データ・知財・著作権に関する懸念、企業データとの連携不足などにより、十分な活用に踏み切れていない企業も少なくありません。

また、AI活用において企業データとの連携や、そのためのデータ整備が重要であることは感覚的に認識されつつあるものの、整備されたデータがAIと連携することの意味や効能は、まだ社会的に十分に言語化されていない状況にあります。
こうした問題意識を踏まえ、本NDLでは、実務と経営の二つの視点を持つメンバーが議論を行い、その論点を社会に向けて啓蒙していくことの重要性を強く提示しました。

(汎用生成AIと構造化データを組み合わせたAIで、分析結果はどう変わるのか?)

本会では、生成AIによる企業分析において、参照するデータの違いがアウトプットにどのような影響を与えるのかを検証しました。

具体的には、参加者が自社や競合企業を題材に、普段使用している汎用生成AIと、経済情報プラットフォーム「Speeda」の構造化された企業・業界データをClaudeと組み合わせたAI環境を使って、企業調査や戦略仮説の整理を実施。それぞれの分析結果を比較し、情報の根拠や分析の深さ、戦略を考えるうえでの有用性にどのような違いがあるのかを議論しました。

この比較を通じて、汎用生成AIだけでできることと、構造化された企業・業界データを組み合わせることで得られる価値、さらに人間が担うべき判断の役割について考察しました。



3. 生成AI単体での分析から見えた有用性と限界 

生成AI単体での利用は「使い方次第で良くもなる」が、「やり方によっては生産性を落とす!?」

今回のNDLでは、参加者に対して議論をより効果的に実施するために事前に生成AIを利用してもらい、それを踏まえて議論を実施しました。
事前に、各自が生成AIを活用し、自社と主要競合の戦略・事業展開の比較分析、ならびに自社の次の成長戦略の仮説構築を生成してみることで、現在社会的に行われている「B2B分野での新規事業分野の探索と仮説構築」での提案検討の局面で活用されたと想定した場合に
生成された結果が、受けて(自社・自分)としてどう感じるかも含めて検証してもらうことで以下の点を議論しました。

(課題調査・分析として)
〜自社の事実情報を踏まえて回答・提示されているか?〜

はじめに、自社の企業調査を生成AI単独で調べて調査レポートとして有用なものになるのか?について実施した結果について各自の意見を共有しました。
結果として、整理に対する一定の利便性はあったものの以下の点について問題点が指摘されました。

  • 情報の対象が公開された情報や直近のリリースなどに偏りがちとなる
  • プロンプトの方法によっては深い情報によって出てくるものとの違いも出るため品質面の乖離がかなりある
  • 公開情報主体のため、綺麗な情報をもとに提示されるため、社内で実際に起きている問題や課題感とは乖離が出やすい


(仮説構築やインサイト構築として)
〜一定の可能性はあるが使い手による差や、利用者のリテラシーが大事になる〜

次に生成した企業分析を踏まえて、競合との戦略の違いや成長戦略を提案する目的で利用した結果を検証した結果を踏まえて、それぞれの視点で可能性と課題を議論しました。
結果としては、一定の可能性はあるが、その内容は受け手の理解度や生成の前提となる分析結果に偏るため、使い手の能力に多く依存する結果になる点が議論されました。
 
  • 視点が広範囲で提示されるため、自社や個々人が持つバイアス破壊には一定の有効性を感じる(自分にないアイデアを出すには有効)
  • 反面、生成の前提が上記自社分析の内容に依存されるため、偏りが生じやすい
    (直近のリリース情報に偏った方向性の提案が出るなど)
  • 結果として出力された内容をどう受け止め(情報のレベルとして)、どう判断してどう利用するか?の使い手の基本的な能力(ビジネスの理解や情報AIのリテラシー)に依存する

4. 企業・業界データを活用したAI分析で何が変わるのか?

AIのアウトプットは、参照するデータによって変わる


上記の問題認識や課題共有に続いて当日は、株式会社ユーザベースの協力のもと、Speedaの企業・業界データを活用したAI分析の環境提供を受け、生成AI単独での分析との違いについて検討しました。
初めにユーザベースより、本会の趣旨に沿った問題意識についてユーザベースとしても認識している課題感について説明がありました。
現在の生成AI利用における主要な課題は、情報の信頼性(ハルシネーション)、回答の平均化、および複雑な分析プロンプトの限界にある点について述べました。
 
また、これらの課題を克服するためには、単なるAIの活用を超え、独自の「構造化データ」をAIに読み込ませる「ラグ(RAG)」の活用が不可欠である点に触れ、実際に今回参加したメンバーの企業を題材にしてユーザベースが有する企業情報とAIを連携して同様な分析を実施した場合の違いを実際に実施した結果をもとに共有し違いを確認しました。
 
その中で、一般的な生成AI(Chat GPT、Claude等)には以下の限界が存在し、独自の構造化データがそれを補完することの意味を確認しました。

  • 平均値化された情報: 
 オープンソースに基づくAIは「外れ値」を出しにくい。独自性の高いエッジの効いた情報がAIの出力内容に特徴を促す
  • ハルシネーション: 
 経営会議等のビジネスの意思決定などの重要な局面では、ファクトチェックされた信頼性の高いデータが必須であり、その検証には膨大な時間がかかる
  • 構造化の欠如: 
 プロンプトのみで複雑な分析レポートを作成することには限界がある。構造化データを「計算資源」としてAIに読み込ませることで、アウトプットのクオリティを底上げできる。



5. AI時代のAI×データ戦略をどう設計するか!


その後参加者ごとにグループで議論を実施しました
「生成AI単体と整備されたデータ×AIの違いから、AI時代のデータ戦略を考える」をテーマに討議を行い、討議結果をそれぞれ意見し合うことで、AI時代におけるデータ戦略や企業におけるAI導入における課題や論点を議論しました。
 
当日議論された事項は以下の通りです。

AIの導入は逆に生産性を下げていないか!?
 AIによって集計や翻訳、企画のドラフト的な作業は容易になったが、「資料などの作成量や報告資料だけが膨大になる一方で、会議や連絡など業務や意思決定のプロセスは変わらない」という状況があります。
そのためAIが提示する論点や選択肢が増えることで、かえって「検討する内容や裏どりチェックなどの時間が増える」「選択肢が増えて検討や悩む時間が増えるという逆転現象が起きているのではないか!」「AIを有効にいかすためにはワークフローやユースケース開発などの取り組みも必要なのでは」などの本来的な議論が展開されました。


AIの「適材適所」が出来ていないことが変革にブレーキをもたらす!?
すべての業務にAIを適用しようとすることが、非効率を招いている可能性もあるのでは?という前提設定の重要性に対する議論も展開されました。
  • 業務によってはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の方が適しているケースがある。
  • 素材や製薬、装置などの「ものづくり」の現場では、物理的な制約(実験や製造のスピード)があるため、AIを導入してもプロセス全体の速度は上がらないためスループット全体という視点で効果的な場所を特定するべき

「使わせる」と「使いこなす」の壁「学習・精度向上」と「利用」二つのサイクル
現状のAIの精度そのままに提供していき、単に現場に「使わせる」だけでは、生産性向上には繋がらない。
利用者側が一定のリテラシーを持って有効に活用しながら、AIの精度や有効度を上げることが必要なのでは?という意見がありました。
 
  • ドメインエキスパートが自身の知見を活かしてAIと「壁打ち」をしなければ、議論が表面的なものに終始する。
  • 「問い」の立て方が不十分だと、深いインサイトが得られず、単なる時間の浪費に終わるリスクがある
  • AIの出力結果はあくまで選択肢の一つでその先の判断力が必要
 
反面、現状のAIを是とするのではなく、利用する中で成長・精度を上げることで、「多くの社員」が「簡単に利用でき」「生産性を得る」環境を提供することで、労働人口不足の日本においては、重要かつ緊急の取り組みになるのではという意見もありました。


作業効率の目線から脱却し、AIを当たり前に活用できる環境を作り上げるべき

〜データ量よりも、データの「質」と「構造化」が重要〜


AIの精度は、モデルだけでなく、参照するデータの質で決まる
AI活用の成果は、AIモデルの性能だけで決まるものではありません。AIが参照するデータの質によって、アウトプットの解像度は大きく変わります。
 
AIの活用において「データが多いことが正ではない」と明言されており、むしろ「ゴミデータが1つ入るだけで推論が崩れる」というリスクが指摘されました。
単なる情報の集積ではなく、信頼性が高く、構造化されたデータを「計算資源」として活用することが、精度の高いアウトプットを生む鍵となることが議論されました。
 
そのため、企業がAI活用を本格化させるうえでは、AIツールの導入だけでなく、AIが参照できるデータをどのように整備し、接続し、活用するかが重要になるという議論が行われました。

AIを目的化せず、変革のセンターピンから逆算する

AI活用の投資において最も重要なのは、自社のビジネスモデルゆえに生じている構造的な課題(センターピン)を見極めることです。
  • 目的と手段の逆転を防ぐ: データ基盤の整備やAI導入はあくまで「手段」であり、先に「構造的課題の特定」という目的が先行しなければなりません。
  • 業種ごとの課題への適合: 例えば、建設業では「生産性向上」よりも「人手不足」が深刻な課題であるため、作業をロボットやAIに置き換えることや、熟練技術の継承(ナレッジ化)に投資すべきであるという議論がなされています

 

AI活用を、資料作成や情報整理の効率化だけで捉えると、その可能性は限定的になります。
本質的な問いは、以下にあります。
  • どの意思決定にAIを活用するのか
  • AIにどのデータを参照させるのか
  • AIの出力を誰が検証するのか
  • 人間はどこで判断するのか
  • 業務プロセスのどこにAIを組み込むのか
AIは、単に作業を速くするだけではなく、意思決定の質と速度を変える可能性を持っています。
そのためには、AIを既存業務に後付けするのではなく、業務プロセスや判断プロセスそのものを再設計する視点が求められます。












6. 懇親会でのネットワーキング:

AI時代の実践知を共有する横のつながり


討議後には、参加者同士による懇親会を実施しました。
当日は、企業の枠を超えて、生成AI活用の実務上の悩み、データ活用における課題、AI時代のリーダーシップ、各社での取り組み状況について、率直な意見交換が行われました。
NDLは、単なる情報提供の場ではなく、次世代デジタルリーダー同士が、実践知を共有し、企業を超えて学び合う場でもあります。
今回の懇親会においても、同じ時代の変革を担う実践者同士として、今後のAI活用や企業変革に向けた関係性が深まる機会となりました。



(次世代CDO育成研修プログラム修了メンバー)
鹿島建設株式会社 真下 英邦氏
株式会社UACJ 西 周一郎氏
資生堂ジャパン株式会社 永盛 達也 氏
太陽ホールディングス株式会社 贄田 智行氏
株式会社アイスタイル 作間 友幸氏
JBCC株式会社 鶴 俊治氏
株式会社リヴァンプ 雨宮 賢氏
※掲載許諾をいただいた方のみ記載

 


次回に向けて


第3回Next Digital Leadersは、生成AIの活用方法を学ぶ場ではなく、AI時代に企業がどのようにデータと意思決定を再設計すべきかを検討する場となりました。
今回の議論から見えたのは、AI活用の競争力は、AIツールの導入数や利用頻度だけでは測れないということです。
本当に問われるのは、AIが参照すべきデータを見極め、信頼できる情報を構造化し、AIの出力を人間が評価・判断し、意思決定に接続する組織能力です。
生成AI時代において、企業の差は「AIを使えるか」ではなく、「AIが正しく機能する環境を設計できるか」に表れていきます。
 
生成AI単体での自社・競合分析と、企業・業界データを活用したAI分析の違いを通じて見えたのは、AI活用の本質が「ツールを使うこと」ではなく、「AIが判断できるデータ環境を整え、人間が意思決定につなげる仕組みをつくること」にあるという点です。
NDLは、AI前提の企業変革に取り組む次世代デジタルリーダーが、論点整理、実践知の共有、意思決定の視座を磨く場です。
今後も、次世代デジタルリーダーの検討を通じて、AI時代の企業変革に必要な論点を社会に向けて発信していきます。

次回会合や次世代CDO育成研修に関心がある方は、NDLサイトよりお問い合わせください。
※AI前提の変革を担う実務責任者(DX/IT/事業側)で、他社実装知に関心がある方



 

【参加検討】次回NDL参加に関心のある方へ(次世代CDO育成研修のご案内)
NDLは、AI前提の企業変革に取り組む実践者が集い、論点整理・意思決定・初動設計を磨く場です。
CDOClub Japanが提供する次世代CDO育成研修修了者が研修後も活動するコミュニティとなっています。
次回以降の参加をご検討の方は、次世代CDO育成研修の概要をご確認ください。
 

AIファースト企業になる覚悟を持つために!

2026年12月開催予定のCAIO / CDO Summit Tokyo 2026 Winterでは、
「AIファースト企業になる覚悟」をテーマに、
AIを前提とした経営・組織・仕事・意思決定・人の役割・ガバナンスの再設計について議論
します。

本資料で整理した「生成AI単体では何が足りないのか」という問いは、
12月サミットで扱うAIファースト企業への変革論点にもつながるものです。

本記事で議論された論点についてより深く理解したい方はCAIO・CDO Summit Tokyo 2026 Winterも是非ご参加ください
 
 

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